第2期収蔵品展「サイパン玉砕~戦争と平和の造形~」
長沼孝三彫塑館は、長井市の丸大扇屋に生まれた彫刻家・長沼孝三の彫塑作品や遺品などを収蔵し、年間3期の展覧会を通じてその作家像を紹介しています。第2期となる本展では、作家が彫刻家としての道を歩み始めた初期から戦前・戦後に制作された作品を中心に、レリーフや写真等の資料、夏の季節を感じる彫塑などを展示します。
東京美術学校卒業後に発表した「インテリゲンチャ」が高い評価を受け新進気鋭の若手彫刻家としてデビューした長沼孝三は、その後帝国美術院展覧会への出品や彫刻家団体「九元社」への参加など精力的に活動します。戦中には軍需生産美術推進隊隊員として日本各地で坑夫や航空整備兵の像などを制作。展示中の「サイパン玉砕」には、作家の当時の心境が生々しく表現されています。戦後は上野駅前に戦後初の野外彫刻と言われる「愛の女神」を設置するなど、平和への希求を表現した女性像などを多く制作しました。
激しい時代のうねりの中で、それに呼応するように生み出された力強い作品の数々をぜひご覧ください。
日時:2021年6月8日[火]- 9月12日[日]
休館日:月曜日(6月14日、21日、28日は開館。8月9日は開館し翌日休館)
猛将の提督と呼ばれ真珠湾攻撃の指揮をとった米沢出身の南雲忠一。もともと、兄が知り合いであり東京のアトリエ近くに南雲が住んでいたこともあって、遊びに行ったり来たりの仲だった。
今作は、昭和十九年七月、南雲がサイパンで玉砕したとの報を受けた氏が、無我夢中で即興的に作ったもの。厳しい表情の南雲。その後ろには、戦渦に巻き込まれた現地の人々の姿。柔らかなフォルムを追求する氏にしては、写実的で力の籠った作品であり、その時の心境がいかなるものだったかが伝わってくる。
尚、今作は世に出ることなく、長年アトリエに眠っていた。
*長井市報2015.7月号『アートのくぐり戸』掲載記事より